狩人話譚

□ ボクとワカ旦那さん[1] □

ボクとワカ旦那さん【4】

 一度は目を覚ましたワカ旦那さんだけど、すぐに眠ってしまいそのままお日様は沈んでしまった。ジンオウガに襲われてから眠ったきりで数日もご飯を食べていないワカ旦那さんが心配で、ボクは同じく心配していた漁師アイルーから譲ってもらった大食いマグロのお刺身をお皿に乗せてワカ旦那さんの眠るテントへ戻った。大好物を前に元気を出してくれるといいと思いながら。
 テントの中からごそ、と音がする。ああ、ワカ旦那さんが起きたのだ、良かった。安心して足を踏み入れると、そこには背を向けて右腕だけのガルルガアームを装着させているワカ旦那さんがいた。
 今までは見てるだけだったそれを、しっかりとはめて手を握ったり開いたりと具合を確かめている。その様子はまるで自分の装備のメンテナンスをしているようで、ボクの知らないワカ旦那さんがいるように見えた。

「ワカ旦那、さん……?」
「!」

 ボクの小さな声を聞いて、ワカ旦那さんが大げさなほど肩をびくりと強張らせて振り向いた。ワカ旦那さん、どうしてそんな顔をするのだろう。あの日のお昼、集会所の出発地点で別れたっきりだったのに、ボクを見るだけで驚くなんてボクを忘れてしまったみたいだ。

 ボクのことを、忘れた?

 全身の血がさぁっと引く。手からも力が抜けて、お皿とお刺身が地面に落ちた。でもそんな事は気にせず咄嗟に背を向けて逃げ出す。涙がドバドバと出てきて止まらないのは、ワカ旦那さんが変わってしまったことが悲しくて悲しくてたまらないからだ。
 背後からワカ旦那さんが何か言っている声が聞こえたけど、ワカ旦那さんがボクを追いかけてきてくれるということにはならなかった。

 獣道をがむしゃらに駆け抜け無意識の内に戻ってきたかつての故郷、原生林の巣で夜を明かしたものの久々に訪れた巣の住人はボクがメラルー仲間の輪にいた頃と総代わりしていて、メラルーからオトモアイルーとして生活を始めたボクにとって馴染みにくい空間になってしまっていた。
 ハンターに解雇を命じられるとオトモアイルーではなくなるらしいけど、人間との生活に慣れたところで突然メラルー(またはアイルー)の生活に戻れというのはなかなか難しいのではないかと思う。ボクは正式にワカ旦那さんから解雇されたわけではないけれど、あの様子では記憶を取り戻した代わりにボクのことを忘れてしまったから、何もしなくてもいずれこの絆は切れてしまうのだろう。
 このまま原生林に留まっていても何も進まない。とりあえず別れの覚悟を決めるために、遠巻きでもいいからワカ旦那さんの様子をもう一度窺おうとチコ村に戻ることにした。

 入口から入るのも気が引けるので、草むらからこっそり入って音を立てずに進んでいくと、丁度村長さんの定位置である長椅子の背後に来ていたようだ。村長さんとワカ旦那さんの会話が聞こえてきたので、耳を立てて会話に集中する。

「そうなのォ。思い出したのねェ」
「一応は。それで、あいつはどこに……?」
「みんなにも聞いたけど、見当たらないわァ。どうしたのかしらねェ」

 やはりワカ旦那さんは記憶を取り戻していた。ボクがいきなり失踪したので心配しているようだけど、ワカ旦那さんからすればいきなりテントに入ってきたメラルーがいきなり逃げ出しただけだ、深く気にする必要なんて無いのに。

「ねェワカちゃん。アナタ、思い出したのならそろそろ村を出る気は無いかしら?」
「えっ?」

 村長さんの一言に身体が強張る。これは予想外だ、まさか村長さんからそんな提案を出されるなんて。ワカ旦那さんも驚いているし。理由が気になるので、もう少し留まって話に耳を傾けることにした。

「アナタを助けた筆頭ハンターさん達が言っていたわァ。アナタ、本当は上位のハンターさんだって。それほどの実力があるのに、ずっと村を守ってもらうのは申し訳ないの。できることなら、もっとたくさんの人を守って欲しいのよォ」
「で、でも! 俺は……。」
「いいのよォ、もう十分恩返しさせてもらったわァ。ここの住人みんながそう思ってる。勿論、“あの子”もねェ」
「……なら、お願いがあるんだけど、いいかな」

 そうだ、村長さんの言う通りだ。ワカ旦那さんはずっとここの専属ハンターとして戦い続ける必要なんて無かった。ワカ旦那さんがいなくても、原生林に不穏な気配があれば集会所に便りを出して、すぐにハンターに依頼をすることができる。それで以前は村が守られていたようだから。
 だから、ワカ旦那さんはもう自由になっていいのだ。そしてハンターの仲間ができたり、あるいはワカ旦那さんを知ってる人が現れたりして……。ワカ旦那さんの未来のビジョンを脳内に描くたびに虚しくなる。ワカ旦那さんは幸せそうだけど、どの世界にもボクは存在しない。
 覚悟を決めようと思っていたのにいざ話を聞けば感情は覚悟というものを上回り、自棄を起こしたボクは草が大きく音を立てるのも構わず再び原生林に戻った。



 こうしてボクは野生のメラルーに戻ったけど、数ヶ月はオトモアイルーとして生活したため杖の上手な扱い方も思い出せないように思えた。
 右手に握っている杖は巣から使われていないものを失敬してきた。自分が使っていた杖はワカ旦那さんのテントにあるけどあちらに戻る気は起こらなかったし、村の誰かと会ってしまったらせっかくの決意が揺らいでしまう。
 モンスターを狩る生活から、物品交換で生計を成り立たせる生活へ。一日でも早くこの生活に馴染まないと……そう考えていると、何かの気配を感じたと同時にそれは声を発した。

「そこにいたのか」

 ドキッ、と心臓が跳ねてそのまま止まってしまいそうだった。聞きたいようで、聞きたくなかった、男の人にしてはちょっと高めの声。背を向けていたのにどうしてボクだとわかったのだろう。淡い希望を持ってしまうけど、現実を思い知らされるのが怖くてその可能性はすぐに心の中で潰した。
 そうしてから恐る恐る振り向けば、ガララアジャラの装備を着込んだワカ旦那さんがいた。怒ってもいないけど、悲しんでもいない様子だ。まるでボクがちょっと家出をしたところをようやく見つけた、といったようなとても自然な雰囲気だった。

「ワカ旦那さん……。」
「どうしていきなり逃げ出したりしたんだ、驚いたぞ」

 ボクを見て驚いたのはどちらだ。ボクの荒れ狂う心中なんて知ったことじゃない、と言わんばかりの能天気な調子にボクはちょっと頭に血が上る。そうだ、これが最後の会話になるんだ。だから怒りのままに杖を強く握り締めて、思い切り叫んだ。

「どうしてボクに構うんですニャ! ワカ旦那さんは全部思い出したんじゃないですニャ!? 村を出て元の居場所に行けばいいんですニャ! ボクのことなんか忘れているから問題なんか、無いですニャ!」
「思い出し……、どうして知っているんだ?」
「村長さんとお話していたのが聞こえましたニャ。思い出したって! 村を出る気は無いかって! だからもうボクとはお別れですニャ!」
「まさかあの時の草の音……ちょ、ちょっと待て……なあ、」
「早く、ワカ旦那さん! ボクを解雇して下さいニャ! ボクはメラルーに戻りますニャ!!」
「ナコ!!」

 ワカ旦那さんにボクの名前を……愛称を呼ばれてハッとする。随分と暴走してしまった。さんざんわめき散らしたのに、ワカ旦那さんは全く怯まず濃いハチミツ色の目をボクに向けている。
 ガララアジャラの加護で咆哮や轟音を聞き流せるからだろうか。そんなことをぼんやりと考えてしまうぐらいボクの頭が冷めてきたところで、ワカ旦那さんが困った顔で静かに聞いてきた。

「なあ、モーナコ。俺は確かに思い出したよ。だからといって、お前をオトモアイルーから解雇する理由なんて無いだろう?」
「だって、ワカ旦那さんは記憶を思い出してボクを忘れたんじゃないですニャ?」
「ああ、思い出したよ。













 名前だけ」



 脳内にマタタビ爆弾を落とされたような気分だった。ドカーン、と豪快な音を立ててボクの頭の中のどこかが部位破壊され、呆然としてしまう。ボクはてっきりワカ旦那さんは記憶を全部取り戻して、代わりにチコ村にいた頃のことを忘れてしまったのだと思っていた。
 それがどうだ、実際はボクのことを後姿で判別したし、ボクに付けてくれた名前も愛称もしっかりと覚えている。よくよく思い返せばどうして村長さんとの会話もいつも通りの雰囲気だった。村長さんを忘れた気配は全く無い。
 ボクはなんて……なんて早とちりをしてしまったんだろう!一人で暴走して馬鹿みたいだ。頭の回転がとても鈍ってしまったけど、再度確認するように言われた言葉を反芻する。

「なま、え……だけ?」

 うん、と平然とした顔でワカ旦那さんは答えてみせた。昨夜とは違う意味で脱力しそう。ワカ旦那さんは感情の起伏がおかしいと思う。大抵は穏やかだけど虫を見れば口調がおかしくなるほどパニックになるくせに、自分の記憶に変化が起きた割に平気そうだし。

「ジンオウガに襲われた後、しばらく頭がぼーっとしていたけど【ジンオウガ】って名前を聞いてる内に自分を呼ぶ声を聞いたんだ。それで、思い出した。俺の本当の名前は【ジン】。でも、それしか思い出せない。他のことは相変わらず霧がかっていて、よくわからないんだ」
「ジ、ン」

 そういえば確かにあの時ワカ旦那さんを助けてくれたハンター達はモンスターの名前を喋っていた。雷を浴びたショックと、本名に似ていたジンオウガの名前が記憶を取り戻すきっかけになるなんて。
 【ジン】、それがワカ旦那さんの本当の名前だと知っても変な感じがする。ボクにとってこの人は【ワカ】旦那さんだから。ぽかんとしているボクにひとしきり説明をすると、ワカ旦那さんはばつの悪そうな顔を浮かべながらあの後描いたらしい真っ赤なツメの模様のほっぺたをポリポリと掻いた。

「昨夜はごめんな。ちょっと混乱してて、あのガルルガアームも他に思い出せることは無いかと試しに試しに付けてみただけだったんだ。村に来た当初もやってみたんだけど、あの時と全然変わらない。俺にとってはただのガルルガアームだったよ」
「ワカ旦那さん……あっ、えっと」

 ワカ旦那さんの本当の名前がわかった以上、ボクはワカ旦那さんをジン旦那さんと呼ばなくてはいけない。そう思い言い直そうとしたのだけど、ワカ旦那さんは首を横に振って無理をするな、と困りながら笑った。

「いいんだ。俺、名前は思い出したけどチコ村の皆が付けてくれた【ワカ】って名前が気に入っているんだ。俺は【ワカ】、【チコ村のワカ】だ。だから今まで通りで呼んでくれ、ナコ」
「…………!!」

 ボクがこうするのをわかっていたかのように、ワカ旦那さんは片膝を立てて姿勢を低くした。迷わずボクはワカ旦那さんの懐に飛び込む。飛び込んだボクを痛くない程度の力で抱きしめるワカ旦那さんは、いつも通りのワカ旦那さんだった。
 昨日の晩に涙を出し切ったはずなのに、また溢れ出てくる。そんなボクを見てワカ旦那さんはごめんな、と優しく言ってくれた。

「迷惑かけてごめん。お前のことを混乱させてしまった。俺、たとえ記憶を取り戻しても【チコ村のワカ】でいるから」
「ワカだんニャ、しゃん……っ!」

 良かった、本当に良かった。尻尾があればワカ旦那さんの腕に巻きつかせたかったのに、それができないのが悔しい。だから代わりに頭をグリグリと鎧に押し付けると、子どもをあやすように優しく撫でられる。今までの経緯を思い返すと、ワカ旦那さんは種族を問わず子どもが好きなのかもしれない。ボクは子どもというほど幼くはないけれど。
 さらさらと林の葉っぱが静かに揺れている音を立てている。気持ちが落ち着いてきたのか、周りの音もよく聞こえるようになってきた。

「あと、もう一つ謝っておきたいことがあるんだ」
「何ですニャ?」
「だいぶ前に、若いハンター達が来た日があっただろう? ドスイーオスとドスゲネポスの狩猟をした、明け方の時だ」

 あの日。三人の若いハンターが1年前に海に投げ出されてしまったという仲間を捜しにやって来た日のこと。だけどあの時ワカ旦那さんは麻酔玉を喰らったかのように熟睡していたはずなのに、どうして知っているのだろうか。村長さんや漁師アイルー達から話を聞いたのかもしれないけど、あの日の話を持ち出す理由がわからない。

「なにやら叫ぶお前の声が遠くに聞こえてさ。実は目が覚めてた」
「ニャ!?」

 パニックになりながらどうにか誤魔化そうとした結果、バレバレの虚言となったあの叫びが村の隅のテントまで届いていたとは。轟竜と呼ばれるティガレックスにも負けない大咆哮をしてしまったようで、ボクは恥ずかしくなって再びワカ旦那さんの鎧に頭を埋めた。

「それで、どうしたのかと思ってテントを出たら丁度女のハンターを見たよ」

 鎧に頭を押し付ける動作を止める。片手剣のハンター。赤く長い髪の毛が綺麗だった、ボクのバレバレの嘘を見過ごしてくれたようにも思えた女の人。あの人が見ていた方角は原生林ではなく、その手前のワカ旦那さんがいたテントだったのだ。ということは……。

「その人は、ワカ旦那さんを知っている人でしたニャ?」
「いいや。俺にはピンと来なかったし、あっちも目が合っただけで特に何も」

 その言葉から本当にワカ旦那さんが彼女らの捜しているハンターではなかったということなのか、それともやはり……とも思う。そういえば、あの後テントに戻ったらワカ旦那さんの寝相が変わっていたのは狸寝入りをしていたというわけで、してやられたなと妙に悔しく思う。ボクに隠す必要なんて無かったのに。
 インナー姿でみっともなかったかなー、とちょっとズレたようなことをぼやいていたワカ旦那さんだったけど、突然自分を呼ぶ声の調子が真面目になったのでボクは咄嗟に顔を上げる。ハチミツ色の目がちょっと悲しそうに見えた。

「……なあ、ナコ」
「何ですニャ、ワカ旦那さん」
「もし俺が本当に全部を思い出して、代わりにお前やチコ村のことを忘れてしまったらさ……。」

 ボクを抱きしめる腕に力が入る。それはわずかに震えていて、ボクはワカ旦那さんの気持ちがわかった。ワカ旦那さんも怖かったんだ。思い出すことと、忘れることが。ジンオウガに襲われた後しばらく目を覚まさなかったのも、きっと記憶の海を彷徨い続けて溺れてしまっていたからなんだ。

「その時は、俺のことを思いっきり殴ってくれ。俺が記憶を思い出せるように、【チコ村のワカ】でいられるように」
「……わかりましたニャ。オトコとオトコの約束ですニャ」
「あれ? ナコ……お前、男だったのか?」
「ニャ!? ボクを女の子だと思ってたんですニャ!? 酷いですニャ……そんなじっくり観察しないで下さいニャ!」
「あ、ホントだ。猫獣人の玉が二つある」
「ニ゛ャアアアアアアア! 今度寝てるワカ旦那さんの鼻の上ににが虫を乗せてやりますニャ!!!!」
「うわっ、それは勘弁」

 真面目なシーンをぶちこわす発言と行動(あろうことかワカ旦那さんはボクの股間を凝視していた!)のあまりのデリカシーの無さに怒りと気恥ずかしさとで咆哮をあげると、それに反応したかのようにワカ旦那さんの背後から何かがドザザザ、と大きな音を立てて地面から現れる。
 所狭しとズルズル身体を引きずって現れたとにかく長いそれは、【絞蛇竜ガララアジャラ】。防具を一通り揃えるぐらいワカ旦那さんにとって狩り慣れたモンスターだ。ボクをそっと下ろすとワカ旦那さんはガララアジャラと向き合い、想定外の出現モンスターから逃亡するのかと思いきやとんでもないことを言い出した。

「よし、それじゃ狩猟を開始するか」
「ニャッ?! もしかして依頼を受けて来ていたんですニャ?」
「うん」
「だからどうして依頼を放っておいてボクを捜していたんですニャ! 時間切れになって、討伐に失敗したらどうするつもりなんですニャ!!」
「だって、俺のオトモアイルーだし。心配だったし」

 目の前の邪魔者が会話に夢中になっているのが腹立たしいのか、ガララアジャラが鳴甲をジャラジャラと鳴らして威嚇する。直後巨大な咆哮が響いたけど、聴覚を守られているワカ旦那さんには風が通り過ぎるように無意味なものだった。それは、実はボクもだけど。狩猟を開始するためワカ旦那さんは狩猟笛を肩に担ぎ、ガララアジャラを見据える。

「それとさ」
「何ですニャ?」
「俺と村長の話をどこまで聞いていたかはわからないけど、近いうちにチコ村を出るよ」
「…………。」
「お前も一緒に、な」
「ニャ?」
「当たり前だろう? その許可を村長から得たんだ。お前は俺のオトモアイルー、相棒なんだから」
「……ハイですニャ!」

 ガララアジャラが動き出す。獲物の動きに合わせるようにワカ旦那さんは狩猟笛を担いだまま駆け出し、まずは動きを封じるべく後ろ足を狙う。ボクは杖しか持っていないけれど、ガララアジャラの気を引く囮ぐらいにならなれる。だけどワカ旦那さんは動こうとしたボクに離れるように指示し、狩猟を開始した。
 笛を叩きつけて、回避。また笛を叩きつけて、回避。重いけど隙が大きい一撃を確実に当てながら、ボクはワカ旦那さんの言葉を聞いた。

「バルバレから色んな所に行こうな」
「遺跡平原のベースキャンプで釣りをしたり」
「地底洞窟で色んな鉱石を採掘したり」
「天空山で双眼鏡を使って景色を眺めたり」
「外の世界は広いんだ。一緒に見よう、ナコ!」

 最後の一言でガララアジャラの背中に乗れたらカッコ良かったんだろうけど、ドスイーオスに尻尾をかじられるドジなボクを雇ったワカ旦那さんも結構ドジなハンターで、勢い良く段差を飛び降りて背後から奇襲を仕掛けたものの、ガララアジャラの尻尾で鬱陶しいブナハブラを叩き潰すかの如くベチンと弾かれてしまった。そのダメージも狩猟笛の旋律の効果で薄められていたけれど。
 そんなワカ旦那さんを見てボクはクスッと小さく笑ってしまった。態勢を立て直すため回避に専念するワカ旦那さんには聞こえないだろうと思いながらも、ぽつりと呟く。

「ワカ旦那さんはボクがいないと駄目ですニャ。逆も然り、ですけどニャ」



 ボクはワカ旦那さんと一緒に二度目のバルバレ訪問を果たした。
 集会所でご飯を食べていたところ二人のハンターと相席して、
 ワカ旦那さんは彼らと一緒にグループを組むことになった。
 ハンターが三人になったのでボクは狩りに参加できなくなってしまったものの、
 新しい仲間のハンターが連れているオトモアイルーと【モンニャン隊】を結成して
 ワカ旦那さん達とは違うお仕事ができるようになった。

 ワカ旦那さんと一緒に狩りに出ることもあるし、モンニャン隊として狩りに出ることもある。
 ボクはオトモアイルーとして、とっても充実した日々を送っていた。
 だから、忘れていたのだ。
 ワカ旦那さんにいつの間にか付けられていた肩書きが
 【記憶喪失のハーメルン】なんて名前だったことを。
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