狩人話譚

□ ボクとワカ旦那さん[4] □

ボクと臆病なオトモアイルー【1】

 チコ村にやってきて数日が過ぎた。当然ながら数日経ったぐらいじゃワカ旦那さんが現れるわけなんて無い。そうわかっているのに、心のどこかにぽっかりと穴が開いてとてもやるせない。

(ワカ旦那さんがいないと……寂しいですニャ)

 目標を見つけ、達成するために一人で頑張ることを選んだワカ旦那さん。何を目指しているのか、そのために何をするつもりなのかは教えてもらえなかった。なのでそれは再会する時の楽しみにしておくことにしている。
 今日も村のみんなと一緒に網で魚を引き上げ、ボクは竿を手に海辺へ向かう。ワカ旦那さんが釣り上手と知ったのはお別れする少し前の狩りの時だった。ボクも釣り上手を目指してみようか。そう思いながら釣り糸を垂らしてみたけど、引きを待っている間にワカ旦那さんの声が耳の奥底から蘇ってくる。

『大人しく待っていてくれ。あいつを狩ったら戻ってくるからな』
『よくやった、ナコ。本当に頑張ったな』
『【モーナコ】とは【癒す者】。誰かを救う優しい心を持ってほしいと俺は願ってそう付けたんだ』
『お前みたいに言葉が通じたら、話し合うことができたら無駄に血を流さなくても済むかもしれないのにな』
『お前にはチコ村にいてほしい。いつか必ず、迎えに行くから』

 たくさんの狩りで、ボクにかけてくれたたくさんの言葉。ワカ旦那さんとの出会いはボクを大きく変えてくれた。だけどワカ旦那さんとお別れしている今のボクは、足を止めて一歩も動いていない状態だ。

「あっ、モーナコ! 引いてるニャ、早く引くニャ」
「ニャニャ!?」

 背後から漁師アイルーに指摘されて竿を持っていた両腕にかかる重みにやっと気が付くけど後の祭り。竿を引き上げる間も無く、逃げられてしまった。ふわふわと軽い竿の重みがもの悲しい。

「あーあ、惜しかったニャ。また次を頑張ればいいニャ。長く滞在する予定ならゆっくり練習できるニャ」
「……ニャ、そうですニャ」

 漁師アイルーの言う通りだ。時間はたっぷりとある。このままぼんやりとした日々を送ってだらけた姿をワカ旦那さんに見せるわけにはいかない。ボクは釣りを諦めて竿をしまい、原生林に向かった。

 草の匂いが強い原生林はボクの故郷。土地勘はばっちりだし、ワカ旦那さんと一緒に行動する内にどこで何を採取できるのかもわかるようになった。目的のものを漁ってみると、それらはあっさりとポーチに集まった。

「薬草にアオキノコ、あとは空きビンと……棒の代わりは木でもいいですかニャ」

 ビンはアイルーの巣から使われていないのを失敬すればいいし、木の棒ならそこらじゅうに落ちている。それらを両手で抱えて村のテントに戻った。ぺたりと座り、材料を並べて意気込みの鼻息を鳴らす。

 ボクは調合に挑戦してみることにした。

 ワカ旦那さんが一番調合していたのが【回復薬】だった。それは薬草とアオキノコを調合してつくられている。ボクの目の前でよく空きビンを使って調合をしていたから、見よう見真似でもできそうな変な自信があった。
 ビンの中にアオキノコを入れて、棒ですり潰す。両足でビンを押さえながら両手で棒をぐるぐると回してキノコを押し潰し続けると、少しだけ水分が出た。次に薬草にその水分を含ませてしわくちゃにしたらビンの中に入れる……はずが、予想外のことが起きた。

「……あ」

 アオキノコに触れたボクの毛に水分が吸い取られてしまい、せっかくアオキノコから出した水分が無くなってしまった。残ったのは中途半端に潰れたアオキノコと中途半端に湿った薬草だけ。ワカ旦那さんにできてボクにはできない理由がはっきりとしてしまい、思わず耳が垂れる。

(よく考えたら、仕掛けが大がかりな罠や細かい作業が必要な弾の調合なんかもボクには無理ですニャ。この手には難しすぎますニャ)

 じっと草とキノコの匂いがしみた両手を見る。人より指が短く毛に覆われた手は、細かい作業に向いていない。ひとまず肉球についた薬草をビンの中に入れてみたけれど、この作業を何度も繰り返してやっと一本の回復薬ができあがることを考えると重労働だ。

(やっぱりワカ旦那さんはすごいですニャ。これを毎日、何年間も繰り返していたなんて。だからあんな手になったんですニャ)

 ワカ旦那さんの草の色が少ししみついたがさがさした手の感覚を思い出しながらボクは外に出た。海の水で軽く手を洗うと、村長さんがボクをじっと見つめていることに気が付いた。

「どうしましたニャ? 村長さん」
「モーナコちゃんがのんびり過ごせているかしらァ、と思ってねェ」
「おかげさまでゆっくりできていますニャ。でも、ボク何もしないままは嫌だから調合をやってみたんだけど……ダメでしたニャ」
「あらァ? 調合なんてやってみたの、すごいわねェ」

 日に当たりながらのんびりとした口調で話す村長さんの隣にいるだけでボクの気持ちも和らいでくる。日差しは強すぎず弱すぎずでぽかぽかしていて、海も穏やかだ。

「ワカちゃんがねェ、モーナコちゃんをのんびりさせてほしいと言っていたわァ」
「えっ!? い、いつワカ旦那さんとお話したんですニャ?」
「数日前だったかしらねェ。モーナコちゃんをこの村に滞在させてほしいと言ってきたのよォ。どうしても一人でやらなくちゃいけないことがあるからって」

 いつの間にか村長さんにボクを預けることを前もって説明していたようだ。そういえば村に着いた時もみんな話を知っているかのような歓迎っぷりだった。違和感を感じることなく村に入り浸ってしまうほど。
 村長さんは穏やかな波を見つめる。優しそうな表情はまるでワカ旦那さんを自分の子どものように思っているように見えた。

「あの時のワカちゃんの目、きらきらしていたわァ。村にやってきた頃とは大違いだったもの。記憶が無かったせいもあるけれど、目を覚ました直後のワカちゃんの目はまるで迷子みたいに不安そうだったのよォ」

 ボクがワカ旦那さんと初めて出会った時、ワカ旦那さんは記憶喪失だった。だけどそんなことを全然感じさせない、しっかりとした雰囲気を持っていた。村の悲しい過去を覚えていないからだったのかもしれないけれど。
 村長さんはワカ旦那さんのハチミツ色の目に記憶が無いこと以外の不安も見抜いたのだろうか。忘れたかったこと、忘れてはいけなかったこと、どちらもあったはずなのに海に流されてしまったことに対する迷いを。

「名前を取り戻して、記憶を全部取り戻して、この村に来てくれる度にワカちゃんの目が輝いていくのを見ていたわァ。どんどん明るくなって、まるでお日様みたいだったもの」
「村長さんにはワカ旦那さんの変化がわかったんですニャ?」
「ええ、わかるわァ。数日前のワカちゃんの目が一番輝いていた。今が一番生き生きしている気がするのよォ」

 生き生きしている。きっと、目標に向かって歩きだそうとしているからだ。そう思うとボクは嬉しくなる。課せられた宿命に立ち向かい、変えようと努力しだしたのだと。

「だから、ワカちゃんは大丈夫。モーナコちゃんも信じてあげてねェ」
「ボク、ワカ旦那さんが帰ってくる日を待ちますニャ!」

 ありがとうございますニャ、と頭を下げてぽかぽか島へ向かう。釣りの練習もしたいけれど、ボクは今だってオトモアイルーだ。いつでも狩りに出られるように鍛錬は欠かさないようにしよう。



 朝は漁の手伝い、午前は原生林の探索、お昼は釣った魚を食べて夕方まで体を動かす。そんなサイクルを続けていたけれど、ある日突然村長さんに原生林に行ってはいけないと言われてしまった。

「どうしてですニャ? 村長さん。原生林には凶暴なモンスターも多いけれど、立ち向かわずに逃げてましたニャ」
「今まではそれで良かったんだけどねェ、最近とっても凶暴なモンスターが現れてしまったのよォ。ギルドに討伐依頼は出しているから、モンスターがいなくなるまで待っててねェ」
「……わかりましたニャ」

 困り顔の村長さんを見てお世話になっている上に更に迷惑をかけるわけにはいかないと思い、ボクは原生林に行くことを諦めた。
 近寄ることすら断られるモンスター。凶暴ということは、【恐暴竜イビルジョー】だろうか。それとも【轟竜ティガレックス】や【雌火竜リオレイア】とか……?想像だけでは答えが出ず、かといってこの目で確認することもできないのでしばらくはぽかぽか島で鍛錬に専念することにした。

 それから数日後、ぽかぽか島の管理人さんがほうきに寄りかかってため息をついていたので思わず声をかけた。

「管理人さん、おはようございますニャ。ため息をつくなんて何かあったんですニャ?」
「あら、モーナコさん。このため息は幸せを逃がすものではありませんのよニャ。桃色吐息ですわニャ」
「ももいろ……?」
「今朝、【筆頭オトモ】さまにお会いしましたのニャ。あの雄々しい姿、惚れ惚れしますわニャ」

 筆頭、随分と前に聞いた名前。そうだ、ワカ旦那さんがジンオウガに襲われた時に助けてくれたハンターたちだ。ちょっと長めのブロンドの髪をしたリーダーの男の人、黒い髪と浅黒い肌の女の人、オレンジ色の髪の毛の男の人。あの時オトモアイルーの姿は見えなかったけれど、誰かのオトモアイルーなのだろうか。

「その筆頭オトモはどこにいるんですニャ? ボク、会ってみたいですニャ」
「あらあら、今日は原生林を踏み荒らすモンスター討伐のためにチコ村を訪れていたみたいですわニャ。もう出発されているのではないのですわニャ?」

 村長さんが出した依頼を受注したハンターがとうとう村にやってきたのだ。モンスターの正体と、ハンターを知ることができる。心が弾み、思わず声のボリュームも大きくなる。

「討伐ですニャ!? ちょっと見に行ってきますニャ」
「お待ちになってくださいませニャ、モーナコさん。村との約束をお忘れになっていませんですわニャ?」
「ニャ……。」

 ぴたりと動きが止まる。約束、とはチコ村に滞在している間にワカ旦那さんのオトモアイルーとして活動をしてはいけないこと。
 ギルドはハンターがしっかりと依頼をこなすところを空から気球に乗って眺めている。そんな所に依頼を受けていないハンターのオトモアイルーが乱入したら、たちまち不審アイルーとしてギルドに身分を調べられてワカ旦那さんに迷惑をかけてしまう。オトモアイルーを解雇せずに野放しにしているのだから。
 ボクはただのメラルーとして原生林を歩き回ることはできても、オトモアイルーとしてモンスターを狩ることはできない。それでもボクはそのアイルーと、ハンターに会いたかった。風の噂が本当なら“あのアイルー”も一緒にいるはず。
 ボクはその場でベストを脱ぎ、野生のメラルーの姿になる。この姿で遠巻きに見るだけなら怒られないだろうと考えた。管理人さんもボクの意志に納得してくれたみたいだ。

「気をつけてくださいませニャ。今回はパゥワァフルなモンスターを狩る依頼を受けたそうですわニャ」
「わかりましたニャ、ありがとうございますニャ!」

 こうしてボクは原生林へ向かった。鼻でペイントの匂いを探ったけれど、感じ取れないのでまだ狩りは始まっていない。ということはまだハンターはモンスターと遭遇しておらず、狩猟態勢に入っていないようだ。
 地面を見て新しい足跡がついていないか探す。すると人間の足跡とアイルーらしき小さな足跡が二人分ある。これだ、と妙な確信を得たボクは足跡を追いかけた。

 ベースキャンプを出てユニオン色の鳥が羽ばたくエリアを歩き、更に足跡を追うとよくコンガがのんびりとしている場所に着いた。堂々とエリアの真ん中を歩くわけにはいかないので草むらに隠れながらハンターたちを捜していると、突然何かが飛んできて近くの草むらがスパンと斬れたので思わず悲鳴をあげてしまった。

「ニャアァ!?」
「む、我らが同胞のアイルーかメラルーのようニャ」
「そんなところにいる時点でそうじゃないかと思ったけどさ。出ておいで、別に殴りゃしないよ」
「……ニャ」

 ガサ、と音を立てて草むらから顔を出す。そこにいたのは女のハンターと、アイルーが二人。そして片方のアイルーはボクを見て目を丸くしながら声をかけてきた。

「……もしかして、モーナコニャ?」
「【ニコ】! やっぱりニコですニャ!」

 かつてチコ村にいた旧友との再会だった。

「久しぶりニャ、モーナコ!」
「お久しぶりですニャ、ニコ」

 懐かしさからか思わずニコがボクに飛びつく。真っ白な毛もたれ目なところも変わらない。ボクも嬉しくなって二人で飛び跳ねているともう一人のアイルーがボクらの肩に手を置いて制止をかける。

「二人とも落ち着くニャ。ニコ、このメラルーが誰なのかボクと旦那さんに教えてほしいニャ」
「あ、ごめんなさいニャ。モーナコ、あいさつしてほしいニャ」
「初めましてですニャ。ボク、【モーナコ】といいますニャ。チコ村にいた頃のニコの友達で、オトモアイルーですニャ」
「オトモアイルー? それじゃアンタ、誰かのオトモなんだ。素っ裸で茂みに隠すなんて変なことをするハンターだね」
「旦那さん、ワカさんはそんなことしない人ニャ。モーナコ、ワカさんはどうしたニャ?」
「実はですニャ……。」

 ニコの旦那さんともう一人のオトモアイルーにワカ旦那さんのことや今は諸事情で別行動をとっていることを話すと、ニコの旦那さんはあー、と何かを思い出すように声をあげた。

「溶岩島のアカムトルムの右牙を折った奴だね? ニコから聞いたことがあるよ」

 ニコの宿敵であった【覇竜アカムトルム】。以前ワカ旦那さんとボクでニコの目の前で戦ったんだけど、ワカ旦那さんが溶岩島の熱にやられてしまいアカムトルムが溶岩島を一時的に離れるぐらいしかダメージを与えられなかった。
 その狩りからしばらく経って、ニコがチコ村を去ったと聞いた。アカムトルムを討伐した勇敢なハンターについて行ったと村長さんが話していたけれど、目の前にいるこの女の人こそがそのハンター。そして一緒にいるのが筆頭オトモと呼ばれる優秀なオトモアイルー。まるで有名人に会えたような気分だ。

「牙を砕いていたから打撃武器の使い手だと思っていたけど、狩猟笛とはねえ……。 しかもソロでよく生還できたもんだ。で、そのワカって奴は何歳? イケメン? 彼女いる?」
「ニャッ!?」

 唐突な質問責めにボクは頭の中がこんがらがってしまった。見た感じ、このハンターはワカ旦那さんと同世代のようだ。ワカ旦那さん自身は二十五歳と決めているけど実年齢は不明らしいし、イケメンなのかはボクの感覚ではわからない。そしてワカ旦那さんにはヒナさんが、いや今はエイドさんが……いやそんなことは話せないと困っていると筆頭オトモが首を振ってハンターに代弁してくれた。

「旦那さん、いきなり余所様の旦那さんのことを根掘り葉掘り聞くのは失礼ニャ。そもそも旦那さん、まだ自己紹介をしていないニャ」
「あっ、そうだったね。あっはは、ごめんごめん!」

 偶然にもワカ旦那さんと同じく三本爪のペイントを小さめに塗ったほっぺたを上げて、女ハンターは高らかに名乗った。

「アタシは【燐飛リンフィ】。【我らの団】の専属ハンターなんだ」

 からからと明るく笑うリンフィさんの髪の色は、大地を彷彿とさせるワカ旦那さんの黒土色とは対照的に、澄んだ空のような鮮やかなマカライト色をしていた。長い髪を後頭部に束ねているため頭の動きに合わせてサラサラとなびく。
 カブレライト色の服にマカライト色のラインが入った鎧は【灯魚竜チャガナブル】の素材のものだろうか。あまりゴツゴツしておらず、淡いユニオン色の袖や帯が華やかで異国の雰囲気を出している。
 腕に一本角の猟虫が付いていたので背負っている武器は操虫棍と把握した。まるで槍のような尖った切っ先はカブレライト色とマカライト色のグラデーションをしていて、何のモンスターの素材なのか、またどんな力を秘めているのかも想像が付かない。
 見慣れない装備に見とれていると、隣にいた筆頭オトモも自己紹介をしてくれた。

「ボクは人呼んで【筆頭オトモ】の【シャガート】ニャ」

 【シャガート】、それが筆頭オトモと呼ばれるアイルーの名前だった。ナルガネコ防具をまとった出で立ちは物語に出てくる遠い国に伝わる戦士【ニンジャ】のようで、背負っている大きな十字型の武器が先ほど草むらを刈った正体だと理解した。
 ちなみにニコが着ているのはお父さんが身につけていたという旗本ネコ防具。前のようにぐんにゃりと曲がっていた背筋はピンと胸を張るように伸ばされていて、【臆病アイルー】なんて呼ばれていたのが嘘のような変わりようだ。もうニコは臆病者なんかじゃない。勇気を手に入れた、勇敢なオトモアイルーなのだ。

「リンフィさん、シャガート、よろしくお願いしますニャ」
「ああ、アタシのことは【リン】で構わないよ。みんなそう呼んでるから」
「わかりましたニャ、リンさん」
「で、モーナコ。アンタは主がいないのに何しにここに来たの?」
「ニャ、えっと、筆頭オトモ……シャガートを連れたハンターがリンさんだとわかって、リンさんについて行ったニコに会うためですニャ」

 口に出してみるとあまりいい理由には思えないな、と反省する。リンさんたちはこれから狩りに向かうのに、ボクは旧友に会いたい一心で原生林に飛び込んでしまった。狩猟の邪魔にしかならないのに。

「そっか、それじゃ積もる話は狩りを終えたらにしときな。アタシらはこれから“奴”を討伐するから」
「奴? 原生林の脅威って何ですニャ?」
「聞いて驚くことなかれニャ。あの【ラージャン】ニャ」
「!!」

 ダメと言われても驚かない方が無理という話だ。【金獅子ラージャン】、書物でしか知らないけれどアカムトルムと同じく古龍に匹敵する強大な力を持つモンスター。太い二の腕から繰り出されるパンチはとても強烈で、当たりどころが悪ければ一撃で昏倒してしまうハンターもいるというほど。そんな強敵に挑むなんて。

「アタシの勘だと、奴はこの先にいる。アンタは村に戻りな。そんな素っ裸じゃ、あいつのパンチ一発で骨が粉々になるよ」

 リンさんの発言は冗談でないように聞こえる。先ほどまで見せていた明るい笑顔ではなく、すっと狩人の表情に切り替わったから。

「シャガート、ニコ。準備はいい? 行くよ」
「もちろんニャ、どーんと来いニャ! それじゃモーナコ、また後でニャ」
「気を付けてですニャ」

 パシャパシャと軽い足音が遠ざかる。あれがバルバレの英雄、我らの団と呼ばれるキャラバンの専属ハンター。あっけからかんとした明るい人だったけど、最後に見せたハンターの表情は洗練された熟練の狩人のようだった。
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